[PHILIPS] C.ハスキル(pf) P.ザッハー指揮ウィーンso. / モーツァルト:Pf協奏曲23番K.488
商品コード: 1298-001
商品詳細:2曲(20/23番)入りの12"もあるが、この10"が初出。状態の良いプレスとなると尚更珍しい。1954年録音、1956年のモーツァルト・ジュビリーの目玉商品の1つとなった。音質は良く、ハスキルの影を引いた滲みのある音色がしっかり出てくる。彼女の繊細な音は再版の際に最も欠落しやすい情報であり、CDでは別人になってしまう。この、ともすればぼやけて感じられる渋いタッチこそが彼女の魅力であり、それを確実に届けられる初出盤!近年10"はなかなか見なくなって久しい。この録音は恐らく当社からモーツァルト・ジュビリー用の録音ではなかった可能性が高い。何故なら1954年に録音されているからだ。しかしPHILIPSはもう1枚の10"とカップリングして2曲入りの12"として、10"も12"も両方モーツァルト・ジュビリー作品とした。それだけ当時ハスキルの名声は高まっていたのではないかと思われる。1950年代でハスキルの音をレコードに収めることは困難を極めたと思われる。ピアノはただでさえダイナミックレンジが大きい上に、マイクを遠ざけるとハスキルの命ともいうべきデリケートな弱音が弱くなってしまう。PHILIPSの録音には苦労したと思われる。しかし上手くできたとは御世辞にも言えない録音である。悪く言えば焦点のぼやけた締まりのない音になってしまった。しかしハスキルのダイナミズムを入れるにはオフ・マイクにする必要があり、ワンポイントでは弱音がボヤけた団子のような音になってしまう。協奏曲はオケも入れねばならず、ソロより難しいのだろう。PHILIPSに残るハスキルのモノラル録音は総じてこんな感じである。それでも人気が絶えないことはハスキルのソロの素晴らしさにある。墨汁が滲んだような広がりを持つ音は当時ハスキルを特徴付けるものであり、他の誰もこんな音を出せなかったからだろう。ハスキルがハスキルでいるためにこのぼやけてはいるが滲んだ音を愉しむ以外にない。尚12"にカップリングされた音は、ここから情報量が欠落していき、音が痩せて行くだけで明瞭になるわけではない。便利ではあるが10"の音には敵わない。
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