商品詳細：「言葉が表現する力のなくなったところ、そこから音楽がはじまる。いうにいわれぬもののため、音楽は作られる。」若きドビュッシーが語った言葉である。実際、この歌曲集はフランス語で歌われているが、聴こえてくるのはただ音響を形作る一要素としての人の声、それも時間の経過、あるいは熱の高まりとともにピアノとの質的な境を失い、全てが融合した得もいわれぬ趣き深い空間が広がる。もちろんヴェルレーヌ、ヴィヨン、ボードレールらの、その詩が自ずから持つ音楽性がそうさせるところもあるだろうが、とかくこの果てしなく耳に快い空間に身を浸している限り、そこに意味を追いかけることはもはやさほど重要ではない。にもかかわらず、自分でも知らなかった感情や感覚を、こんなにも、遠くから、深くから、引き寄せてくれる、それがドビュッシーの神秘であり、むしろ分かろうとしないほど、向こうから歩み寄ってくるのが彼の面白さである。エリー・アーメリング、ジェラール・スゼー、マディ・メスプレ、ミシェル・コマン、フレデリカ・フォン・シュターデが曲毎に担当、それらを包み込むダルドン・ボールドウィンのピアノがまた殊に美しい。さて、このレコードの真髄は曲間にこそ宿る。言葉が終わり、音楽がはじまるところ、その瞬間にぜひ心を添わせて聴いていただきたい。(KT)

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