商品コード:1223-053[SUPRAPHON] スーク・トリオ/ ベートーヴェン:PfトリオOp.97「大公」
商品コード: 1223-053
商品詳細:スーク・トリオにとっては大公トリオの1961年以来の2回目録音だが、録音はそれ以上に意義の大きなものだった。これは日本コロムビアとの共同制作で、日本コロムビアの出来立てほやほやのPCMデジタル録音の最初期分としてチームは首都プラハから北東に90kmほど向かった高原の田舎町ルチャニ・ナト・ニソウへ向かう。その町の小さな教会に音楽ディレクターのヘルツォーク、録音部長のクールハンなどチェコ・スプラフォン・レコードの録音クルー、そして共同制作の日本コロムビアからはディレクター2名とPCM録音技術者2名、さらにコロムビアから録音アドバイザーとして参加を要請されたデンマーク人、ヴィルモースと、3カ国の録音スタッフが集まった。デンマーク人、ヴィルモースはVALOISレーベルなどで録音技師を務める名技師である。その彼がチェコの田舎まで同行したことは1975年で世界初のデジタル録音に大きな関心を持ったからだろう。録音時の詳細は日本コロムビアが投稿したブログで見ることができる。日本コロムビアの第2回PCMヨーロッパ録音」(1975年6月~7月)の中で録音された、いわば先遣隊の録音だったのである。はるばる日本から運ばれてきたPCM録音機は教会内の一室ではなく、教会から数十メートル離れた死体安置小屋に据え置かれた。当時のPCM録音機はメインのアナログ/デジタル変換機が1台、記録機としての放送局用2インチVTRが2台、そして監視機器の3セットで構成され、総重量400kg近くになり、2台のVTRから生じる騒音が大きいので、隔離せざるを得なかったのだ。2日間で「大公」を録音した後スメタナQt.の録音も行い、チームは何もない高原の田舎町に2週間以上滞在することになった。J.スークはすぐにパリに向い、ルージッチコヴァーのチェンバロ伴奏でヘンデルのヴァイオリン・ソナタ全集をヴィルモースの手によりPCM録音を行っている。ヴィルモースは既にPMCデジタル録音を習得していたのだろうか?「大公」はDenon:OX-7035-NDで1975年11月にEuropean Recording Series – 7として発売され話題を呼んだ。この録音がこれまでの録音を音楽的に凌駕したとは言えない。しかし新技術を導入し立てに付きまとう様々なトラブルをクリアし発売できたことは歴史に残る仕事だった。SUPRAPHON盤はPMC音源を流用してデジタルではなくステレオでマスタリングしたものと思われる。ジャケットには全く記載はない(日本コロムビアとの共同制作とだけ記載)。しかし音質には勿論大きく影響がある。音はクリアだが、クリアすぎる違和感がなくもない。新しい技術には拒否反応がある。こういった試行錯誤を経て1980年代にはSUPRAPHONもデジタル録音を開始した。スーク・トリオにとってはただただ迷惑な話だが、演奏者もいずれ乗り越えるべき壁ができたことを実感させる録音であった。
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