商品コード:1307-054b[Les Discophiles Français] Y.ナット(pf) / ブラームス:ヘンデル変奏曲Op.24, 2つの狂詩曲Op.79, 3つの間奏曲Op.117
商品コード: 1307-054b
商品詳細:イヴ・ナットが最も心血を注いだのはベートーヴェンとシューマンだったため、ブラームスの録音はこの1枚3曲のみである。他には確かショパンも10"を1枚だけ残していた。ナットの演奏の中心軸ではないが、一度でも当盤を聴けば、このピアニストに対する信頼が揺るぎないものになるだろう。当社の記録では1957年のDF 177が初リリースで、ヘンデル変奏曲のみ10インチ(25095)が存在するが発売は当盤より後になる。その後、1961年頃に同一内容でDF 730027に番号変更された。状態の良い盤は少なく、ストレスなく聴くのであれば敢えて2版とする手はあるが、多少のノイズが有ってもDF 3桁番号の音質は現代の最新技術を使っても再現不可能なリアリティとプレゼンスを持っており、DF黄金期の芸術を味わうことができる。聴き込むほどにナットへの尊敬が高まる一枚。尚、イヴ・ナットはイーヴ・ナットが現地の発音に近いと思われるが、当社ではイヴ・ナットで統一する。今となってはイヴ・ナット(1890 - 1956)と聞いて心踊る方は少数派だろう。彼の国際的な活動は、1909年にドビュッシーに連れられた渡英にはじまる。ヨーロッパやアメリカ各地各地で演奏旅行を行い、ベートーヴェンやシューマンの演奏で評価された。ヴァイオリニストのジャック・ティボーやジョルジュ・エネスコ、ウジェーヌ・イザイらとも頻繁に演奏旅行を行っている。1934年に、母校パリ音楽院での教育と、自らの作曲活動に集中するため、演奏活動を退く。亡くなる1956年まで、パリ音楽院の指導的教師の一人として、ジュヌヴィエーヴ・ジョワやピエール・サンカンらを育てた。しかし1950年代にはピアノの演奏活動を再開、1951年から1955年にかけてベートーヴェンのピアノ・ソナタの全曲録音を実現させた。他少数だがシューベルトやヴェーバー、ショパン、ブラームスといった、とりわけドイツ・ロマン派音楽も得意とした。ナットの特徴は俗にいうパリ音楽院スタイルと言われる、多くのフランス人の演奏スタイルとはかけ離れている。精緻なアゴーギク、迷いのない痛烈な強い打鍵などから来る剛腕とも言える力強さが何より顕著。根底にパワーありきで。アルフレッド・コルトーのように長い指を生かした芳醇な音色と武器とするタイプではない。その点でベートーヴェンの評価が著しく高いことが理解される。ブラームスもベートーヴェンの延長線上に浮かぶ演奏となる。ハンマーのような一発で心臓を貫くタッチで奏でるブラームスには爽快感さえ感じる。フランス人の演奏するブラームスといった偏見は微塵もなく砕けるだろう。ひとつのスクールの開祖にすら思える様な大きなスケールを持つ、神業的ピアニストであった。
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