商品コード:1312-038[La Voix De Son Maître] E.フィッシャー(pf) / ベートーヴェン:Pfソナタ8番「悲愴」, 23番「熱情」
商品コード: 1312-038
商品詳細:バッハ/ベートーヴェンの権威、エドヴィン・フィッシャーはブレンデルの師でもある。その超辛口の味わいに両者の共通点がある。フィッシャーのベートーヴェン録音は意外と少なく、1950年代に発売された初期LPは2枚(4曲)しかなく、戦後は腕の故障で指揮活動に力を入れていくことになる。バッハの平均律クラヴィーア全曲の世界初録音を行ったが、ベートーヴェンはSP期にシュナーベルが世界初のソナタ全集を行った為、意外にベートーヴェンについては知られていない。残された録音は7/ 8/ 15/ 21/ 23/ 30/ 32番の7曲存在するがEMIスタジオでの録音は4曲(7/8/23/32番)だけで2枚分のLPがEMI系から1950年代に発売されただけである。他はプライベートプレスなどが存在するらしい。エドウィン・フィッシャー(1886- 1960)はスイス、バーゼルの生まれ。同地でハンス・フーバーに師事。大戦後は指揮者の活動がメインとなる為、ピアノ演奏は大半がSP録音である。しかしベートーヴェンの4曲は幸いにも1952年頃のモノラル録音であり音質も良く、フィッシャーの世界観をタップリと楽しむことができる。この時期のフィッシャーは技巧的な欠落を指摘されることもあるが、楽曲の本質的な精神を把握することにかけては無類の存在であって、技巧的弱点を補って余りある高次元の音楽性を持っている。もはやエドヴィン・フィッシャーにしか表現できない世界感であり、そういう芸術に技巧云々はもはやナンセンスという他ない。強い打鍵を用いずとも音楽の高揚感を引き出すことのできたピアノマスターであった。1942年にスイスに帰り、ルツェルン音楽院で教鞭を執りつつ限られた演奏を行い、世界中のピアニストから高い尊敬の念を受けたフィッシャーの言葉を引用したい----我々が自然な音楽的成長の初期の段階にあるうちは、我々は彼のメロディーの民謡的特質や、その和音的で諧音的な作品構造のわかりやすさのお蔭により、充分モーツァルトに親しみを感じておれるのであるが、その次には、たいていの場合、はげしい奮闘的なものに心を惹かれ、熱情的なものを愛する一時期がやってくる。そうなると、どれほど強烈な表現もなお充分に強いとは思えず、どれほど華麗で、練達で、魅了的であっても、なお物足りない。このようなことでは、我々はとうてい大作曲家モーツァルトに近づくことはできないのであるが、さらにその次の時期 ― まったく斬新なもの、気の利いたもの、過激なもの、革命的なもの、あるいは外見上問題的なものを探索する時期 ― においてもこの事情にかわりはない。だが、いつの日か迷妄の夢はさめる。そして、モーツァルトの音楽においては、内容、形式、表現、ファンタジー、器楽的効果など、いっさいがごく単純な手法によって達成されていることに気づくのである。この日が訪れるとき、君はあらゆる模索、あらゆる欲求から完全に救われるのだ。
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