商品詳細：アレクサンドル・ヨヘレス(イオヘレス)(1912–1978)は珍しいピアニスト。イグムノフに直接指導を受けた弟子の一人で、序列では大物フリエールの次に名前が出てくる古い世代の名手である。数少ない録音だけがヨヘレスを知る資料である。グネーシン音楽アカデミーの卒業生であるということ程度しか分かっておらず「ロシアピアニズム」でも殆ど語られていない。北欧系のような名前だがロシア生まれ。後にモスクワ音楽院、グネーシン音楽学校で教授を務めた。日本人にも指導を受けた人は多い様だ。1956年Westminsterに録音があり、EMI系にも少なくとも2点のLPがある。バッハを得意とし、シューベルトも重要なレパートリーだった様だが過去の入荷は無い。MELODIYAに最低10点のLPがある筈で、今回が2種目の入荷となった。シューマン作品集だが、あまり演奏されない隠れた小品を選曲している。明確で淀みの無い、いかにも教授らしい演奏。遊びこそないが誰の耳にもその上手さが伝わり、思わず聴き惚れてしまう歌心が自然と滲み出てくる。作為を微塵も感じさせない名演とはこんな演奏なのだろう。血気盛んな若手の演奏とは一線を画す、教授的でお手本のような演奏。ただし、信じ難い指運びで素早いパッセージを難なく描き出す姿から、相当な腕利きなのは間違いない。弟子は取らなかったようで演奏家として身を立てていたと思われる。これだけ指が回れば録音は少なくとも演奏会では拍手喝采を浴びただろう。シューマン作品がどうもシューマンらしく聴こえない。まるで自作を披露している様に聴かせる、曲芸師的な側面も持った演奏家だったと思われる。腕前で勝負する人だが、技巧を抑えた表現力でも勝負が出来、昔気質の職人の様なところも有る不思議なピアニスト。大物に違いない!

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