商品詳細：ラヴェル、ドビュッシー、モーツァルトのPf作品全集の録音で、今なお不動の評価を得るギーゼキング。もちろんベートーヴェンも、彼の中核にあり、EMIでソナタ全曲録音が計画されたが、残念ながらその夢は途中で絶たれた。彼は録音開始から6日半で両面3枚分のディスクを完成させたが、'56年10月22日、「田園」ソナタの3楽章の後に体調を崩し手術、その4日後の26日に帰らぬ人となってしまったのである。このようにして、5曲のソナタ、そして図らずして彼の"遺言"となった「田園」が異例の1～3楽章の形で発売された。それにしても、1年前の12月に事故で妻を失い、自身も重症を負ったにも関わらず、翌春にはツアー復帰、9月以降は多彩なレパートリーの録音に勤しんでいたというのだから驚きである。実際このレコードも、こうした現実に起きた事の気配というものは最後の一音まで全く感じさせない。そればかりか、いかにこの作曲家を、そしてピアノを、冴え冴えと、真に自身の芸術としていることだろう。思い返せばギーゼキングにとって、ピアニスト人生の実質的な幕開けとなったのもまた、20歳にハノーファーで行ったベートーヴェンの全曲演奏であった。そこから40年、様々な局面を体験した彼の変化、そして変わらぬもの…その精神・歩みの全てが、この音の中に生き続けている。(KT)

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