商品詳細：この録音について書くために、1枚目のPf協奏曲1番、そして幾つかの作品を聴きながら、まっ先にバッハ、そしてモーツァルトの音楽について考えた。すなわち、ショパンがもっとも影響を受け、その譜面を丹念に観察していたであろう人物である。このように思考が運ばれたのは、思いがけないことのようでいて、ワイセンベルクが、彼自身に課していた演奏信念を辿れば、全て1本の糸で繋がる必然だったと気付かされる。ショパンという人は、「平均律クラヴィーア」によって身に沁みついたバッハ由来の和声と対位法、古典作曲家が重んじた形式美に対する執拗なまでのこだわり、楽曲のイメージを限定しかねない標題の嫌厭など、その甘美な旋律とは裏腹に、創作における思考回路はかなりドライで原理的である。対するワイセンベルクもまた、作品の構造・様式をひたすらに見つめ、いかに肉を付けずにその骨格を捉えるかという姿勢を貫いた。余計なものを徹底的に論理的に取り除いていった結果、最後に残るもの=作品の構築性にこそ、作曲家の美学や非凡な力が宿るという彼の鋭敏な視点。それはショパンに限らず、「演奏とはなにか」を考える上で重要な問いかけとなるのではないだろうか。(KT)

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