商品詳細：おそらく、ステレオとして世界初の全曲録音だったと思われるカルメン。'59年録音、'60年発売。ソプラノ歌手にとってカルメンはやはり格別のものがあるだろう。ロス・アンヘレスは当時歌手としてキャリアの絶頂期を迎えており、これとほぼ同時期にファウスト、ジャンニ・スキッキ、椿姫、蝶々夫人などの作品でヒロインを務めたが、いずれもはまり役と言わんばかりに見事に役を演じ分けている。そんな中でも、ロス・アンヘレスが描き出すカルメンは、その野性的な情熱や本能を直接的に前に押し出すのではなく、どこか可憐さも感じさせる、自由への憧れをもった軽やかな姿をしている。そうした意味で例えばカラスのそれとはまた異なる印象の女性像。さて、対するホセ(N.ゲッタ)の廉直ぶり、ミカエラ(J.ミショー)の純真さもまた絶妙と、どこを切り取ってもその腕の確かさをひしひしと感じる演奏な訳だが、こうした各キャラクターの個性や対照性は引き立たせつつも、全体を通してあるエレガントさ、気品や余裕を最後まで損なわないのは、流石ビーチャムの貫禄といったところ。多くの歌手がそれぞれ名演・名録音を残しているカルメンだが、その可能性はまだまだ留まるところを知らない。(KT)

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