商品コード:1333-007[TELEFUNKEN] N.アーノンクール指揮/ バッハ:マタイ受難曲(全曲)
商品コード: 1333-007
商品詳細:古楽器とその奏法を用いた初の「マタイ受難曲」であったと記憶している。1970年TELEFUNKENはDas Alte Werkシリーズの一貫として、本格的古楽器を用いて男性歌手、男性(少年)合唱のみで構成されたバッハ時代に立ち返るべき出来うる限りオーセンティックな「マタイ受難曲」の録音を計画していた。1970年当時、まだピリオド楽器に対する認知度は低く、楽壇では「海のものとも山のものともわからない」程度の扱いであった時期である。ニコラウス・アーノンクール(1929- 2016)はベルリン生まれでウィーン交響楽団入団の翌年、1953年にはアリス夫人らとともに古楽器オーケストラ「ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス」を立ち上げ、古楽器復興に力を注いでいた。TELEFUNKENは僅かながらバッハのカンタータ枠を彼等に与え、1960年代後期からDas Alte Werkシリーズとして協奏曲、カンタータ等を彼等に任せ、古楽器への理解を示し、レーベルとしては先陣を切って取り組んだ。恐らく好感触を得たのだろう。1970年ついにバッハの総本山たる「マタイ受難曲」に彼等の総力を結集して挑むことになった。ソプラノ役はウィーン少年合唱団のメンバー(個人名は伏せられている)、カウンターテナー歌手等を集め、合唱はレーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊、英国から参加のケンブリッジ・キングズ・カレッジchoと2つの少年合唱団と総力を上げてこの一大プロジェクトを完成させた。出来栄えはこれまでのモダン楽器による「マタイ受難曲」の常識を根底から変えた。専門家の評価も良かったのは徹底期に拘った結果としての完成度の高さである。そしてバッハの宗教曲は新時代に移行した。アーノンクールの前か後かと言われる時代になったのである。発売当初はあまりにエキセントリック過ぎて大きな拒否反応もあったようだが、今となってはこの分野の古典的名演を超えて原点とも言うべきバイブルとなっている。オーセンティックな少年合唱団を用い、これまでになかったすっきりとしたスタイルを打ち出した。後年多くの古楽器スタイルのマタイが出たが、この録音こそが原点であり、バイブルである点は揺るぎないだろう。LPは幸いにも黒盤の最後期に当たり音質も良い。その後宗教曲演奏でカウンターテナーが引っ張りだこになった。日本でもアニメ映画のテーマ曲になった事実が物語っている。器楽メンバーには若かりし頃の、バルトルド・クイケン、シギスバルト・クイケンの名がある。女性の声が皆無というバッハの受難曲は新鮮な驚きを与えたが、古楽界隈では当然という状況となった。仮に女性の場合でもエマ・カークビーのようなボーイ・ソプラノを連想するような声質の歌手が注目を集める現象が起こった。この「マタイ受難曲」が与えた影響は至る所に及んでいる。
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